エリートなあなた


誰だろう、とはやる心が身体をそこへ向けた――ついに後ろの襖が開いた。



「遅くなってごめん!」


その言葉とともに中へ入って来た人物に、顔が凍りついてしまった。



「ほんとよ!」と憤慨する絵美さん、「まあまあ、」とその彼女を宥める松岡さん。



「ちょっと呼ばれて、すいません」


「ふんっ、そんな顔して謝ってもね。私はアンタの顔に騙されないっての!」


「…だから、ごめん」


「――はいはい、お姉さまハウスハウス」


彼氏を睨んで席を立った絵美さんは、言われた通りに向かい席へ移動してしまう。



「あー、やだやだ時間に遅れるとか!」


「ごめんって、絵美さん」


苦笑しながらまたお詫びを入れたのは――紛れもなく黒岩課長だった。



< 111 / 367 >

この作品をシェア

pagetop