エリートなあなた


それが絵美さんの苛立ちを誘うのか、眉根を寄せて鋭さの増す目つき。



“秘書課のルックキラー”と呼ばれるその片鱗を、まじまじと見てしまう。



「あんたね、真帆ちゃんを気遣いなさいよ!」


「っ…、」


だけれど次の瞬間、彼女が放った言葉で大きく動揺してしまった。



――反応が怖くて、…とても隣の課長を見ることが出来ない。



「真帆ちゃんごめんね。もしかして、ビール苦手なんじゃない?」


その言葉で、しまったと気づいたけれどもう遅い。


「ほら、乾杯したあとずっと飲んでないからさぁ」


「…え、あ、…はい」


手と密着させていたジョッキの水滴が、虚しく手のひらを濡らしていた。



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