エリートなあなた
口調はいたって穏やかで優しい。ただ向けられるダークグレイの瞳が無機質なだけ。
それに耐えきれずに視線を泳がせたものの、彼の表情が理由だけではない。
――心の内を他人に悟られてしまった、という子供みたいな自分がいたから。
「さっきの吉川さんの目、…俺が入社した頃と一緒だったんだ」
「どういう、」
しばらく続いていた沈黙を破ったのは、エリートと称される人には到底無縁なものだった。
自分の表情どうこうを気にするより、黒岩課長と同類項にされる部分がまるでないと困惑してしまう。
「事情はどうあれ、…人には必ずチャンスは訪れるってことかな?」
「チャンス、ですか?」
その言葉で引き寄せられるように顔を上げれば、微笑を浮かべながら頷いた黒岩課長。