エリートなあなた
遠くで聞こえる車のクラクションや六本木の夜を謳歌する楽しそうな声。
路地裏の奥にある細い通りで対峙する私たちとは、あまりに対照的なものだ。
「…ですから、もう戻って」
「どうして?」
「え、絵美さんたちが…」
「あの2人はどうでも良い――吉川さんが心配だから」
いまなお食い下がる、眉根を潜めた課長の発言に目を白黒させる。
「な、何言って…」
「ウソは吐いてない」
まっすぐにダークグレイの眼差しを捉えていたものの、さすがに動揺は隠せなかった。