エリートなあなた


すると視線を逸らし、珍しく小さな自嘲笑いを浮かべた彼。



その横顔から理由を窺い知れるわけもなく、ひやりと冷たい夜風が頬を撫でていく。



「…いつも大切な人を、失敗して泣かせているのに?」


「っ、」


「本当は好きだって言えない、ただの臆病なヤツが?」


「っ…、」


そして紡ぎ出された言葉の数々が繋げていくもの――それは絵美さんのことだ。



はっきりと口に出して言われると、ショックは心を奈落へ一気に落としていく。



「何度も諦めようと思ったんだけど、…やっぱり無理で。

それどころか自分が泣かせたらわけないよね」


そんな私の愚かな想いなんて知る由のない課長。


悲しみの色をたたえたダークグレイの眼差しで、問いかけるように微笑んで来る。



< 130 / 367 >

この作品をシェア

pagetop