エリートなあなた
すると視線を逸らし、珍しく小さな自嘲笑いを浮かべた彼。
その横顔から理由を窺い知れるわけもなく、ひやりと冷たい夜風が頬を撫でていく。
「…いつも大切な人を、失敗して泣かせているのに?」
「っ、」
「本当は好きだって言えない、ただの臆病なヤツが?」
「っ…、」
そして紡ぎ出された言葉の数々が繋げていくもの――それは絵美さんのことだ。
はっきりと口に出して言われると、ショックは心を奈落へ一気に落としていく。
「何度も諦めようと思ったんだけど、…やっぱり無理で。
それどころか自分が泣かせたらわけないよね」
そんな私の愚かな想いなんて知る由のない課長。
悲しみの色をたたえたダークグレイの眼差しで、問いかけるように微笑んで来る。