エリートなあなた
ビル群の隙間からのぞく夜空は、くすんだ青色が月を隠している。
まるで誰も通らない細い道で立ち止まる、私たちの見えない心を表しているようだ。
――本心をさらけ出せないところだけは彼と一緒なのだと、見つけてしまった共通点が悲しい。
「か、ちょうの、…す、好きな人って」
遠くを見る眼差しがあまりに悲しくて、思わず目を瞑ってしまう。
だけれど、勝手に動き出した口は止まらない。…はっきり失恋してしまった方が楽だと。
「…、」
それなのに、レスポンスの速い彼から肝心の答えが返って来ない。
どういうことかと薄目を開けたところ、課長は大きな左手で口元を覆っていた。