エリートなあなた


その姿に違和感を覚えたのは当然のこと。少し近づいて、課長の顔を覗き込んでみた。



「急にどうしたんですか?」


今度は目を泳がせるものだから、不躾にもストレートに尋ねた私。



「…吉川さん、本気で言ってるの?」


「は…?」


ようやく手を外した課長といえば、今度は盛大な溜め息を吐き出した。



どういうことかと目を丸くさせていたところ、少し屈んで顔を覗き込まれる。



その不意打ちに頬に朱が走った気はしたけれど、ここが薄暗い夜道で救われた。


「――彼氏は?」


「は?え、と。…いません」


「好きな男は?」


「っ、」


なぜこんなキワドイ質問をされるの?とも聞けず、あっさり核心に迫られる。



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