エリートなあなた
一瞬ダークグレイの瞳が見開いたと思った刹那。気づいた時には、彼の香りに包まれていた。
そして頭上から心地良い声音で、「――ありがとう、」と言ってくれた課長。
あたたかくて広い胸へと引き寄せられた瞬間。ただ嬉しくてポロポロ涙が零れていく。
「好きなんです…っ、ずっと、ずっと、」
伝えたいことはたくさんあるのに、上手く言葉が出ないもどかしさ。
だけれど本能からか、目の前のシャツをキュっと掴んでしまっていた。
「うん、うん」
そうして、やっぱり優しい声で受け止めてくれる課長にすがる。
不安がっているより、この気持ちを大切にして前に進みたい。
何より、…課長以外に好きになれる人なんていないから。