エリートなあなた
その優しさが私に平静を取り戻させ、彼の目を見て続きを待つことが出来た。
「真帆は入社前から有名だったって知ってる?」
「え?なぜ?」
唐突に言われると、訝しげな表情になってしまう。彼はくすりと小さく笑って、
「というのも真帆がその年の理工系出身者の中で、入社試験トップだったから」
「えええ、そうなんですか!?」
目の前で素っ頓狂な声を上げたため、さすがの課長もこれには苦笑する。
「それも真帆の配属希望先…、試作部か海外事業部だったんだろ?」
「え。それも知ってるんですか!?」
今度は目を大きく見開けば、「調べたもん」と舌をぺろっと出して茶化された。
「まあ、つまり人事から聞いたんだけどな…。
それで真帆が優秀と知っていたから、秘書課で顔を会わせていた時もずっと試作部のメンバーに欲しかったんだよね。
――本人がせっかくある能力やセンスを活かせずに、つまらないって顔してたし?」
「…そ、そんな露骨でしたっけ?」
じーっと面白そうに視線を投げかけられて、あははとこれには苦笑いする。