エリートなあなた


尖っていた秘書課時代の自分を省みると、…今からでも穴を掘って埋まりたくなる。



「――真帆と同じ年齢の頃の俺と比べたら、ひよこみたいに可愛いもんだよ」


「…それって、褒められてます?」


「もちろん?」


イマイチ納得できないところだけれど、綺麗な微笑がそれを煙に巻いてしまう。



「色々な方面と協議した結果、真帆は試作部で異動して働くことになったんだよ。

まあ…その時に揉めて、多少なりともゴタつきがあったけどね」


――ずっと不思議だとは思っていたけれど、…本当に異例中の異例だったんだ。



オブラートな言い方をしている課長。それが一層のこと申し訳なさを増した。



「ここで本筋に入ると――真帆を秘書課から外すことに難色を示していた上層部から、ある条件つきで異動を許可して貰っているんだ。

“何らかのトラブルが発生した場合、有無を言わせず異動や処分を課す”と、」


「な、…うそ、」


異動や処分という言葉に身震いする。そのためダークグレイの瞳を、ただ見据えるのみ。



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