エリートなあなた


決して何かを尋ねたいわけじゃない、…ただ課長の真意を覗かせて欲しかった。



「きっと、生意気な俺が気に入らないことが、まず大部分を占める。

ただ私的感情から、俺が真帆を故意に異動させたと思い込んでいる節もあった」


「そ、んな…」


「ウワサや思い込みほど、信用ならないものはないな?」


自嘲笑いを浮かべている課長はきっと、直接責め立てられたことが幾度あったのだろう。



だけれど、そこでハッと我に返った。



「あの、…私が異動する前の週の一件は…まさか、」


「ああ彼女ね?仙台営業所の所長補佐に選ばれて喜んでたよ」


エントランスで遭った彼女とのいざこざ。私がウワサに怯えていたのは、ほんの一週間。



それは課長が言った通り、阿野さんが2週間もしないうちに仙台営業所へ異動となったため。



これがただの異動ならば、ウワサから問題あっての左遷と受け取られるだろうけれど。



営業事務の彼女がずっと望んでいた、秘書業務での異動決定とあれば栄転話にすり替わる。



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