エリートなあなた
結局、私は最後まで会うことはなかったけれど。…その方が良かったと思っている。
やっぱり阿野さんにとって、私は疎ましい存在であることに変わりない。
私にしてもアノ時を思い出すのは、やっぱり快いものではないからだ。
「人事の方、…素早いんですね」
「ヒューマン・トラブルに善処するのが仕事だって、その同期は言ってるけどな」
だから課長がエントランスで出くわした時。素早い行動に移して下さったのか。
――たしか仙台営業所の所長さんは、元・本社試作部の方だったはずだ。
「ご、めんなさい」
「…何で謝るの?」
「私のせいで迷惑ばかり、」
顔を覗き込んで来る彼に申し訳なさが募って。俯いてしまう私の頭を、また撫でてくれた。
「迷惑なんて考えたこと、ただの一度もないよ」
「…でも、」
すっかり冷えてしまった身体をシーツで隠すと、大きな手が左手の指の間に絡んでくる。