エリートなあなた
日々製品や薬品類を扱っているけれど、課長の手は羨ましいほど荒れ知らず。
その骨ばった大きな手は、不思議ととてもあたたかくて。私もきゅっと握り返した。
「真帆がいなかったら、松岡のフォローは誰が出来た?
案件抱えて完璧にこなせるのも、真帆の呑み込みが早いからだって言ってたぞ?」
「え、…ほんと?」
目をぱちぱち瞬かせて尋ねれば、うんと頷いてくれる。
「それに…」と重ねて、ダークグレイの眼差しがこちらに注ぐ。
「――真帆の存在があって、今の俺があるから。
感謝こそしても、迷惑なんて絶対にあり得ないよ」
「っ、」
「それくらい、大きな存在だから」
穏やかな笑みと言葉に抗う術はなく、何も言えなくなってしまう。
さっきは彼の熱を求めて寄り添っていたけれど、…今は優しさにただ縋りたくなった。