エリートなあなた


その矢崎さんは中途入社でここへ配属された、部署内では初めての女性だとか。



今では彼の抜けた課の係長を務めており、課長と同じ年齢で女性の出世頭でもある。



ノンフレームのメガネをかけた瞳は強さがあって、その性格を表している女性だ。



「――矢崎さんなら出来る、よな?」


「もー…。そう言われて、私が断れないこと知ってて言うものね」


「俺、そんなに性格悪く見えるかな?」


私のいる場所からだと、課長はその大きな背中しか見えない。



「ああ分かったわ!」


だけれど皮肉なことに、手していたファイルを閉じる矢崎さんの表情は分かってしまう。



どうして彼の腕に掴まっているの?どうして顔を赤らめているの…?



< 156 / 367 >

この作品をシェア

pagetop