エリートなあなた


楽しそうにひとしきり話し、彼女の肩へポンと手を置いて「よろしく!」と言う課長。



「うん…、」


小さく頷いた矢崎さんが課長を見つめる、その眼差しで気づかない方がおかしい。



同じ部署で働く“彼女も”また、課長のことが好きであると。



それこそ部署を一歩出れば、密かに課長社内ファンクラブが存在するらしいけれど。



やっぱり女性と一緒にいる場面を見てしまうと、テンションがた落ちだ。



こちらへ戻って来る彼に慌てて、デスクチェアをくるりと一回転してPCと向き合った。



ずきずき、と小さな痛みはあんな些細な場面で増えてしまう。あー、もう情けない…!



小さく溜め息を吐き出して、スリープ状態のPCにログインしようとした時。



「ねえ真帆ちゃん、」と、隣から聞こえた声で顔を向ければ、声主はもちろん松岡さんだ。



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