エリートなあなた
ぽつん、とひとりきりになった構造課。そこで私は次回の打合せで使用する、2次元CADデータを引っ張り出す。
設計担当が作ったベクトル形式のデータは、試作部またはごく一部の取引先とで共有されているのだ。
それを見ていたところ、「ただいまー」とまるで家に帰宅したような松岡さんの声が。
「お帰りなさい。…もう着替えられたんですか?」
「うん、スーツの方が落ち着くかも」と、ネクタイを締めながら席へ落ち着いた。
「あ、またCAD見てたの?好きだねー。でももう帰るよー」
「…え、まだ19時ですよ?」
「金曜の夜だもん。たまには帰ればよろしい」
そう言ってCAD画面をシャットダウンすると、持ち前の自由さで私を立たせた。