エリートなあなた
そしてすぐ見つかったらしいものが、チャリと音を立て私の目の前へ向けられる。
黒のレザーのキーケースが、ぶらぶらと揺れる光景に目を白黒させていると、
「――はい、これ預かっちゃった」
「…どういう、」
「はい、お手!…じゃなくて手のひら!」
「何ですかそれ…!」
戸惑いながら右手のひらを出した私。イチイチ言葉表現の不思議な彼に、結局は従っているけれど。
「よく出来ました」
そこに重みが加わったのはすぐあと。シックなそれと松岡さんを交互に見てしまう。
「本当に、…どういうことですか?」
「え?黒岩さんのマンションのキーってことが?
あ、それ黒岩さんの奪って来たから帰っちゃダメだよ」
順調に青山を目指して走行する車とは対照的に、私たちの会話はイマイチかみ合わない。