エリートなあなた


ようやく向き直った松岡さんに、どんな顔をすべきなのか分からない。



課長の携帯番号を眺めるだけで、疲れているだろうからと電話に躊躇したり。



メールを送るにしても、同じ職場だから彼のスケジュールを知り得ていて遠慮したり。



――どうすればナイショの関係を築けるのか、…それが分からなくて結局は自己嫌悪。



“会いたい”って言いたかったけれど、そのたび約束が脳裏を掠めて携帯を閉じていた。



「でも、…どうして松岡さんは、こんなに優しいんですか?」


さすがにこの問いかけは予想外だったのだろう。珍しく、「ソッチに来る?」と言った。



「――お節介でも色々するのはね。オレにとって2人が“大事”だからなの、分かる?

昔から知ってる後輩として…、黒岩さんは人に優しすぎるんだよねぇ。

あ、ちなみに今年できた後輩は、大食いな小悪魔だから困ったちゃんだしぃ」


「…大食いは否定しませんけど、」


「ほんとその身体のどこに入るんだろうねぇ」と、けたけた笑っている。



< 168 / 367 >

この作品をシェア

pagetop