エリートなあなた
「…でも、」と笑いを止めると、私をジッと見据えた眼差しは真剣な色に変わった。
「――黒岩さんが自分から欲しい、って言ったの、真帆ちゃんが初めてなんだよね。
だからさぁ、もっとフツーに軽く構えてヤって来い!」
「はあ!?もー!なんでいつもソッチへ落ち着くんですか!?
せっかく松岡さん、ちょっとは格好良く見えてたのに…」
いつもの松岡スマイルでニヤニヤするから、そっぽを向いて自分の席側の車外を見た。
「うーわ、褒め方が微妙だぞー」
「最後の言葉でマイナス100点ですもん!」
「それだと振り出しじゃん。あーあ、天然小悪魔には敵いませーん」
背中へかけられる声もスルーすると、今度は「不良娘になった!」とうるさい。
「…ところで、本当にお借りしたんですか?」
そこでチラッと振り向いて聞いてみれば、「――さあねぇ」と答えた松岡さんはやっぱり優しいクセ者だ。