エリートなあなた
実は尋ねておきながら、すでにスーパーを目指して歩いていたりする。
「いや嬉しい。…なるべく早く帰るから」
「はい、…気をつけて」
「ありがとう」と言って終えた携帯をバッグへ沈めると。
前にコンビニへ立ち寄った時に見つけていたスーパーまで、街路樹と車のテールランプが行き交う中をひとり進む。
電話を終えて数分後。スーパーへ到着すると、メニューを組み立てながら材料をパパッと買い込んでいく。
何が好きだろう?と考えて店内を歩く時間が楽しいのは、食べてくれる人の顔を思い浮かべてしまうから。
調味料類はひと通り揃っていたので、材料だけを選んだものの、やっぱり気合が入って買い込んでしまった。
レジ袋いっぱいに詰め込んだそれを持つと、両手が塞がりながら来た道を戻ること数分。
課長の自宅であるタワーマンションへと到着し、ドキドキしながら鍵でオートロックを解除する。
そしてエレベーターへ乗り込み、目的階の25のボタンを押す。静かに上昇していくそれに心も浮き足立っていた。