エリートなあなた
初めて訪れた時と同じだな、と。くすくすひとりで笑ってしまう。
まともに課長の顔も見られず、“そのトキ”にただドキドキしていた。
25階で到着音とともに停止したエレベーターを降りると、目指すのはただひとつの部屋。
一旦レジ袋を隅へ置いて、手にしたままだったキーケースの鍵を差し込んで回した。
ガチャリ、と音を立てて解錠した部屋へ荷物を持って、勢いのままにお邪魔する。
パンプスを脱ぎ揃えると、おそるおそる直進して向かったのはもちろんリビング。
玄関フロアの薄明りが差し込む中、その部屋の電気のスイッチを点ける前に。
開いていたカーテンの先に臨む、眠らない色あざやかな景色にまた目を奪われた。