エリートなあなた


パンプスへ足を沈めて玄関を出ると、部屋の施錠をして小走りで向かった先――



それはまだ着かないエレベーター前で課長の帰りを迎えたくて、隅へ立って到着を待つためだった。



まだかな、と相手を待つことも楽しいなと思いながら、暫くしてランプの点灯に気づく。



そしてスーッと静かに開いた扉の先に、ダレスバッグを提げた課長の姿を捉えた。



「あれ?どうした、」


「早く会いたくて…、来ちゃいました」


「――それは俺のセリフなのに?」」


連日ほぼ徹夜続きでも、爽やかなスタイルは崩れない。ただし、私を見るダークグレイの眼差しはにわかに驚いた様子だ。



「お帰りなさい」


「うん、ただいま」


閉まったエレベーターの扉を背にした課長が、ただ笑ってくれたから。その瞬間にまた、お邪魔して良かったと思えた。



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