エリートなあなた
何かがまずかったのだろうか、と疑念を持ち始めたのは私である。
「…いや、」
「いや?」
それがものの見事に表れていたのだろう。口ごもる彼の表情もまた浮かない。
固まっている私をひとまずドアから玄関へ入れると、バタンと扉が性急に閉まった。
「――真帆はノリ気じゃないんだって、知ってちょっとショック受けたり?」
あーあ、と重ねて、まるで残念だと言いたげに向けて来る眼差しも不満げ。
「…え、え?そんな話、ですか?」
呆気に取られて聞き返せば、嘆息を吐き出した課長に困惑していたのに。
そんな私をよそに、玄関と繋がる一段高いフローリングへダレスバッグを置いた。