エリートなあなた
ずっと触れたかったこの腕で、つよくつよく抱き締めてくれている課長。
だから私も自然と、目の前のジャケットをただギュッと掴んでしまう。
ずっと触れたかった温度が今ここにある。それだけで不安が晴れると教えてくれるから。
単純でも子供っぽくても気にしない。…ううん、そんなこと考えられないくらい必死だ。
「ずっと寂しい思いさせてごめん、…ほんと俺もダメだな」
沈黙を裂くように頭上で響く、どこか苦笑まじりの甘い声で胸の中から顔を覗かせた。
「いえ、そんな。…謝るのは私の方なのに、」
頭を小さく振って返したところ、「どうして?」と優しい疑問符がかけられる。