エリートなあなた


ずっと触れたかったこの腕で、つよくつよく抱き締めてくれている課長。



だから私も自然と、目の前のジャケットをただギュッと掴んでしまう。



ずっと触れたかった温度が今ここにある。それだけで不安が晴れると教えてくれるから。



単純でも子供っぽくても気にしない。…ううん、そんなこと考えられないくらい必死だ。



「ずっと寂しい思いさせてごめん、…ほんと俺もダメだな」


沈黙を裂くように頭上で響く、どこか苦笑まじりの甘い声で胸の中から顔を覗かせた。



「いえ、そんな。…謝るのは私の方なのに、」


頭を小さく振って返したところ、「どうして?」と優しい疑問符がかけられる。



< 183 / 367 >

この作品をシェア

pagetop