エリートなあなた


「じゃあ乾杯はそれにしよう」と、ワイングラスをもうひとつ食器棚から取り出した彼。



小さく笑ってそれらを順番に持って行くと、彼が後ろから湯気の立つ鍋を運んでくれる。



そして4席あるダイニングテーブルに並ぶ料理を前に、2人で向かい合って席へ着いた。



透明グラスにほんのり色を添える白ワイン。それぞれグラスへ注いで軽く掲げて乾杯。



両手を合わせて「いただきます」を、当たり前のようにする姿を見て嬉しくなった。



私も一緒に「いただきます」を言うと、それをかわきりに少し遅めの食事が和やかに開始した。



そしていよいよメインの取り分け皿に入れたみぞれ鍋を、ぱくり口に含んだ瞬間。



「・・・ん、」


「マズい!?」


「いや――美味しすぎて感動、」


「もー!心配したのに!」


「ハハ、ごめんごめん」


茶目っ気たっぷりに言うものだから、心配して損したと頬を膨らませた私。



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