エリートなあなた
ああもう恥ずかしい…、ともう一度その豚肉を端で掴んでぱくりと食す。
「せっかく美味そうに食べてんのに、見逃すのは勿体ない」
「もー、そうじゃなくて…!」
また彼の口から発せられる、極上スイーツのような言葉を牽制に困惑するばかり。
「――素直に言えって、松岡のキツい説教を受けたんでね」
「…え?」
さらに松岡さんの名前が出てきて顔を上げると、ワイングラスの中身を味わっていて。
取り皿をテーブルへ置いたところ、彼もグラスを置いてその手が向かいから伸びて来る。
「何したら許してくれる?」とダークグレイの瞳で尋ねられれば、答えはただひとつ。
「――朝まで、…離さないで、」
「朝までで良いの?」
心地良いバリトンの声がまた脳髄へと深く響いて。その夜に果たして、終わりをつけられるのか分からない…。