エリートなあなた



―――――――――



「ほら真帆ちゃん、はやくはやくー」


今日も呑気というのかせっかちというのか、松岡さんの声が隣でうるさい。


「…ま、待って下さい!あと3分!」


「それじゃあカップ麺が出来るじゃん。はいあと1分ー」


「えええ!」――本当にワケの分からない人だよ!


ギリギリまで粘ってPCにかじりついていたものの、やはり彼の不思議な論理に敵わず。



泣く泣くのシャットダウン後は、机上に広げていた書類を慌ててまとめ始めた。



「あと30秒ー」


「明らかに早すぎます!」


「ん?松岡タイムだからじゃない?」


「意味が分かりません…!」


書類の山はミルフィーユのように重なってしまい、デスク上はさらに雑然とした感も否めない。



楽しい時間が過ぎるのは、あっという間。反して、日々の仕事はそう簡単に片付いてはくれないと証する光景だ。



何より「あと10秒ー」と、今度は腕時計を見て計測のフリをするあたりが恨めしい。



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