エリートなあなた


車窓から臨む今日の空はすっかり冬に近づき、快晴ながら冷たさの感じる冬の空。



黄色く紅葉していた並木道のイチョウの葉も、いつしか風で散り舞い始めていた。



「今日を終えれば、やっと一区切りついてゆっくり出来るなー」


また隣で大きな欠伸をした松岡さん。万年お疲れでもさすがに、最近は目の下のクマが目立った。



「本当ですねぇ、…何だか早かったのか分からないです」


目的地へ直進するタクシーのフロントへ視線を返ると、不思議と笑みが出てしまう。



今回の2ヶ月という期間、ただひとつのサンプル制作に勤しんでみて感じたこと。



今となっては目まぐるしい毎日で、夜があっという間に過ぎてしまうと知った。



失敗続きの時はさすがに泣きたくなった。でも、涙を流す時間があるなら“働け”と自分に言い聞かせたり…。



「そうそう、こうして年を取るんかねぇ。やだやだ」


「あー…お肌は荒れるからケアも頑張らないといけませんねぇ」


「…まあ、今の真帆ちゃん、贔屓目に見てもねぇ」


その言葉に大きく頷いて彼を見ると、重症者のような不憫な目を向けられてしまった。



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