エリートなあなた


終電が過ぎても終われなくて溜め息をついていた毎日に、本当に終われるのか頭を抱えたことがあった。



あれほどバリバリ働くのが夢だったのに。現実は大変さに匙(さじ)を投げたくなって、次第に取り巻いていく不安。



――諦めていないはずなのに。ほんとうにこれが形になるのか、と。



夜更けの中をクタクタな身体で帰宅すると、自己嫌悪な心も連れ帰って眠れなかった日があった。



そうして先が見えずにいた、土曜日の夜。届いたメールに泣いてしまった私。



――たくさんご飯食べて寝たら大丈夫。


送信主はもちろん修平さん。ごくシンプルな一言が、心をスッと宥めてくれたのだ。



“頑張って”と言われればきっと、落ち込んで空回りしていたと思う。



“大丈夫”と一息つかせるフレーズが、“そっか、私まだ頑張れる”と気づかせてくれたから。



その日から時どき送り合った、短文メールがいつもパワーの源となっていた。



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