エリートなあなた
でも、そんな時――お互いの顔を見て笑うだけで、いっさい否定をしない。
松岡さんは絵美さんとの関係をを、今さら公にするのが面倒と言っているし。
仮に絵美さんの名前を出しても、今度は社内へ美味しいネタを自ら蒔いたにすぎない。
かといって、否定をしたところでまた追及される。結局は何の解決にもならないのだ。
楽しんでいるだけの周囲に苦心するより、本当に大切なものを守るべきだと…。
「ところで黒岩さんのこと、何て呼んでるの?」
「はっ…?何でそう唐突なんですか!?」
「天からのお告げじゃない?」
「いいですよ?絵美さんにメールで苦情入れますからね。
――松岡さんが私の肌がヤバいって言いますって!」
「へえー、じゃあ黒岩さんには――真帆ちゃんが俺のこと“てっちゃん”って呼びたいって言うんですけどってメールしよーっと」
「明らかにウソじゃないですか…!」
「うそから出たまこともあるよ?」
また一本取られた!と横目で見ながら悔しがると、「まだまだ青い!」としてやったり顔をされた。