エリートなあなた


――スクエア・タイプのメガネの向こうの目は、正直なところ居心地がひどく悪い。



「吉川さんもありがとうございました」


「…大変お世話になり、こちらこそありがとうございました」


差し出された手をおそるおそる近づけると、パシっと強く取られてしまう手。



ビクッと肩が跳ねたものの、どうにか笑顔を見せて穏やかに彼との握手に応じる。



少しして離れた手にホッとしたものの、ここはビジネスの場だと溜め息を呑みこんだ。



そしてテーブル上を埋め尽くしていた書類を集め、急いでバッグへ入れ終えた。



早く修平さんに伝えたい、と逸る気持ちがもちろんその理由である。



頑張りきれるパワーを与えてくれた彼に、今日はメールでも良いから感謝を伝えたい。



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