エリートなあなた
ようやく終わって解放感に包まれたかったものの、先方が玄関フロアまで送ると言うので、まずはエレベーターへの道中を3人並んで歩いていた。
当然あまり喜ばしいことでない私の足は、少しずつ歩幅が小さくなってしまう。
――嫌というより、もう会うこともないと思っていた人だから、単純に気まずいのだ。
ほんの少しだけ離れた、2つの男の人の背中に安堵していると。エレベーター前で不意に松岡さんが振り返った。
「どうした?」と簡単に聞いてきたのは、もちろんここが他社であるため。
「すみません、大丈夫です」
「そうか、」と微笑を見せる彼に、私も何でもないと隣に立ってエレベーターを待つ。
なるべく目が合わないように、わずかに俯き加減でやり過ごしていたけれど。
すぐに到着したエレベーターへ3人乗り込んだところ、暫しの沈黙が流れる。