エリートなあなた


このまま脱走してしまいたい私は、今なら盗塁をバンバン決められそうに思うわ。



「元彼のひとりで、あ…でも大学では最後の男だろ?」


「ねえ真帆ちゃん?」


「…、あ、はは、ねえ?」


余計なことまでベラベラ話し始めた剛史に、松岡さんはほくそ笑んでいた。



クセ者上司へ無料で情報をリークしないで貰いたい。…彼の戦術カードになるのに。



その念を込めてメガネの彼を見たけれど、話すことに夢中でまったく気づかない。



残された道はもはや首を傾げてオブラートに包んでみよう、と苦笑に転じるだけだ。




「――にしても偶然ってすげぇよなぁ…。まさか課長の絶賛が真帆なんて予想外!

あ、ちなみに今夜って空いてる?」



「…は?」と訝しげに答えたのは、ペラペラおしゃべりな彼のせいではないだろうか?



< 217 / 367 >

この作品をシェア

pagetop