エリートなあなた
このまま脱走してしまいたい私は、今なら盗塁をバンバン決められそうに思うわ。
「元彼のひとりで、あ…でも大学では最後の男だろ?」
「ねえ真帆ちゃん?」
「…、あ、はは、ねえ?」
余計なことまでベラベラ話し始めた剛史に、松岡さんはほくそ笑んでいた。
クセ者上司へ無料で情報をリークしないで貰いたい。…彼の戦術カードになるのに。
その念を込めてメガネの彼を見たけれど、話すことに夢中でまったく気づかない。
残された道はもはや首を傾げてオブラートに包んでみよう、と苦笑に転じるだけだ。
「――にしても偶然ってすげぇよなぁ…。まさか課長の絶賛が真帆なんて予想外!
あ、ちなみに今夜って空いてる?」
「…は?」と訝しげに答えたのは、ペラペラおしゃべりな彼のせいではないだろうか?