エリートなあなた
「はい大丈夫です。松岡さんありがとうございます!
じゃあ真帆、あとで迎えに行くよ。今日はお疲れ様でした、失礼します!」
そして剛史もまた有無を言わせず踵を返してしまった。その背中を呆然と目で追いかけるだけ。
――せめて誰か私の意見を聞いてからにして欲しい…。
大きく肩を落とす私の手を引き、当然のようにすたすた歩き始めた。そして交差点を挟んだカフェの前で立ち止まる。
「じゃあ待機しててねー」
力を解いて向き直ったその口元は松岡スマイルが健在。これに敵う人はいるのだろうか?
呆気に取られる私に背を向け、コンパスの広い彼との距離はあっという間に広がった。
顔を向けたのは穏やかな照明の光が通行人を引きつける、全国的に有名なお店。
思案するより早く、そのお店から出て来るお客さんによって自動扉が両側へと開いた。