エリートなあなた


「なに笑ってんの、」と、ノックするように頭に触れるところもやっぱり昔と同じだ。



仕事終わりのサラリーマンやOLを横目に、2人で並んで向かった先――それは大通りに面したカフェのすぐ裏にある、小さな洋風居酒屋。


4つのテーブル席とカウンターがあって、私たちは一番奥のテーブル席へ案内された。



「あー、腹減った!」と、座って早々に折りたたみ式のメニュー表を開いた剛史。


「真帆なに飲む?」


「カンパリオレンジ、」


「じゃあなに食べたい?」と言って、次はメニュー表からアラカルトを見せてくる。



適当にチョイスして彼お勧めパスタを頼むと、メニュー表を持った店員さんが下がった。



「ほーんと変わってねえよな」


「…なにが?」


「真帆のパスタ好き」


「――そういう剛史だって、カルボナーラ一辺倒じゃない?」


「この店のヤツが美味いの!ビールとよく合うんだよなー」


そう言ってネクタイを緩めた彼は、よく会社の同僚とここへ訪れているらしい。



向かい合う2人はスーツ姿。それに違和感を覚えるけれど、それこそお互いさまだ。



< 224 / 367 >

この作品をシェア

pagetop