エリートなあなた
テーブルに並べられた、残りわずかな美味しい料理はすっかり冷めてしまっていた。
それぞれの席に置かれたグラスもまた、汗をかいてすっかり時間の経過を物語っている。
「あ!真帆、同情だけはするなよ!?その目は失礼だっての!
オマエに可哀想って思われたら、フラれた時の俺まで可哀想だろうが!」
すると思い出したようにこちらを見た彼。それにビックリして目を白黒させてしまう。
「…剛史、」
「俺にとっちゃ、まあ2ヶ月だけでも楽しい過去だ!
夢の国に遊びに行ったり、サッカー観戦したり、…結構覚えてんだけど、俺はな」
そう言って豪快に笑い飛ばすメガネの奥の瞳は、やっぱりあの頃と変わっていない。
その当時、付き合ってた人と別れて半年後――『飽きさせないから付き合って』と告白してくれたのが剛史。
何かと忙しい毎日に満たされていた私が断ったものの、粘り強い彼に根負けしてお付き合いは始まった。
飽きさせないの言葉通り、2人の都合が合うとテーマパークへ行ったり、景色の綺麗なレストランへ行ったり、スポーツ観戦も何度かした。