エリートなあなた
どこか落ち着いた雰囲気を持つ外見とは違って、笑顔と底抜けに明るいキャラだった。
「…私だって、」
ジョッキの中のわずかとなったビールを飲む彼が、「んー?」とこちらへ目を向けて来る。
「…ちゃんと覚えてる――忘れるわけないよ…。
私は傷つけた側の人だから…、身勝手なことをしたから…さっきの話に何を言っても、…説得力ないけど」
「そんなこと、」
まっすぐに剛史を見据えて静かに口にすると、その言葉にほんの少し目を見開いた彼。
「今日…会った時、普通に話してくれたでしょ?」
「あ?うん。そりゃあ、会えたんだから当然じゃね?」
当たり前だと言いきった彼に、視線を落として小さく頭を左右に振った。
「…本音を言うとね、私は違ったんだ。
どうして会ったの?とか、上司に知られて気まずい…とか、本当に自分勝手で、」
「真帆…」
名前を呼ぶ彼に応じたものの、自嘲笑いしか浮かばない。