エリートなあなた
「剛史の優しさに感謝してる、…1人だから――傲慢だけど、」
「…おいおい、泣かせんなよーマドンナ!」
「ちょ、ま、マドンナじゃないわよ!」
躊躇いながら口にする私を気遣ってだろう。目をゴシゴシ泣くマネをする剛史。
結局、最後まで“ありがとう”を言えずに、大学生活は終わってしまったけれど。
「――いい恋、してんだな」
「…え?」
また新たなビールを注文して、笑い合っていた中で突然の言葉にきょとんとする。
「あ、今から言うのは怒んなよ?――なんか昔の真帆はさぁ、…ワガママな割に自分の意見はないっていうかねぇ…。
瑞穂がクイーンって言われる隣で、お姫様みたいにみんなにチヤホヤされてただろ?――割と大人しいクセに自分の思いと違う結果が出た途端、やっぱりヤダ!って言ったり」
「…最悪だよね、うん」
あまりに的を得ている発言に耳が痛い。手元にあるワイングラスを飲みながら、つい最近までの行ないを恥じる。
「まあ俺もそこが可愛いと思って告ったからなー。フラれた時はまあショックだった」
「…ごめんなさい、」
新たなビールジョッキを喉を鳴らして飲んでいた彼に謝ると、鋭い眼差しが飛んできた。