エリートなあなた
「だからぁー、今の俺が可哀想だから謝るなっての!」と。
頷いてみせると、私の手元にやって来ていたウーロン茶にストローで口をつけた。
「謝ってくるってことには、まだ悪いと思ってんだろ?――そんなのいらねえの。
昔のことを今ごろ謝ってみても何も出ねえよ。俺は俺の中で消化してるからな」
「――うん」と言って、また言いかけた“ごめん”のセリフを呑みこんだ。
するとジョッキを置いた彼が向かいから、まじまじと顔を見ていた。
「でも、真帆変わったよな。うん、…ますます綺麗になった」
「はっ!?なに、いきなり」
明らかに動揺する私をケラケラ笑いながら、「どんなヤツ?」と重ねられる。
「…いつもパワーをくれるから、私も彼に応えたいと思える優しい人で…。
なにより…一緒にいる時間が一番ホッとする、かな?」
ついつい答えてしまったけれど、恥ずかしさのあまりまたグラスの中のウーロン茶を口にした。