エリートなあなた
思わぬ福音
「ハハハッ!マドンナも遠い昔みてえな顔してるぜ」
「ひょ、…とー…」
ケラケラと笑いながら、人の顔で遊んでいる彼を睨むことしか出来ず恨めしいけれど。
「いてっ!暴力反対!」
「は、にゃひぃ、てよぉ」
「いってー!…俺はこんな力入れてねえっての!」
もちろん黙ってされる私ではない。目の前の手をつねり返し、つばぜり合いを繰り返していた刹那。
「――手を離してあげてくれるかな?」
両者を打ち止めさせる心地良い声がふと、背後から聞こえた。すぐさま剛史の目は私から逸れてそちらを向く。
ピタリと力の抜けた私たちはそれぞれ解放感が訪れる。地味に痛い頬を押さえるより早く、振り返ってしまうのは当然だ。