エリートなあなた
そのためニヤリと妖しさを含む笑みにも、毅然としていなければならない。
「もちろん、“元カレと仲良くデートさせちゃった”って言っただけ」
「さ、詐欺…!」
ようやく粘り勝ちしたと思えば、奈落の底へ突き落すのが得意な人である。
そろそろ時間も迫ってきて歩き始めたものの、私の気分はブルーに染まってしまった。
「真帆ちゃんー、可愛いお顔が残念だよ?」
「何を言っても詐欺です!もうっ!」
コーヒー缶を手にしながら軽口を叩く彼の隣で、思いきりそっぽを向くだけである。
「ほーんと2人って似てるよねぇ――キングとマドンナって」
「…どこがですが、」
それをあっさり覆すのもまた松岡さん。思わせぶりな言葉につい、つられてしまうのだ。