エリートなあなた


するとなぜか試作部のセキュリティ・ゾーンの目前で、その足を止めてしまった彼。



となれば、さっきの発言の真意を聞きたくなっている私も自然に立ち止まるのが摂理。



対峙するとすぐ、涼しげな眼もとを細めて笑う。さらには、ニヤリと口角を上げてまで。



「――素直に見えて素直じゃないところ」


「はぁ、…当たってますよね。私だけなら間違いなく、」


期待をしていてさほど…な答えが返って来るほど、落胆するものはない。



「マドンナだもんねぇ」


「…それ、絶対に広めないで下さい」


「今日も天気が良いよねー。絶好の休日お仕事日和だー」


「そうです、はい」


「時間って残酷ー…」


うんうん、と小さく何度も頷いて肯定した私の背中を、ぽんぽんと叩いて前へ進めるマイペースな松岡さんとセキュリティ・チェックを受けた。




この時の私がまだ何も知らないことを、彼は知ったうえで放った言葉だったのだろう。



タイムリミットなんて存在すると、…信じるはずのない子供だったから――



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