エリートなあなた


だから、ようやく終了となれば顔にも笑みが表れてしまう。すでにデスクの上は綺麗に片づき帰宅準備が整った。



辺りを一瞥して周囲の状況を確認していたところ、斜め向かいの人と目が合ってしまう。



「あれ?吉川さん、もう終わった?」


「あ、はい…、そうですね」


それは同じく朝からPCにかじりついていた、大野さんという27歳の先輩である。



短めのくせ毛が四方へはねている、ナチュラルヘアが特徴的な構造課のメンバーだ。



「なにニヤニヤしてたの?」


「えっ…、そうでしたか?」


タッチブラインドする手を止めた彼の視線は、完全にPCから逸れて私へと向いた。



曖昧な言葉と笑顔で誤魔化し、ここは穏便にササッと逃げるつもりでいたのに。



「もしかして…、今から松岡さんとデート!?」


にわかに動揺する私を指さし、それこそ薄気味悪い笑みを浮かべた大野さん。



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