エリートなあなた
一瞬、その言葉に固まってしまった。そしてもう一度、反芻していた自分。
――松岡さんとデート、…デート?はぁああああ!?
「ちっ、ちがいますよ…!」
なおもほくそ笑んでいる大野さんに、両手を左右に大きく振って否定する。
ちなみに隣席の松岡さんといえば、小一時間ほど前に作業を終えて退社済み。
そんな私たちには本命がいる、と知らないでの発言と分かっていても対処に困る。
「あ、そっか――もしかして、松岡さんと時間差退勤ってヤツ?
周知の仲なんだし、今日なんて休日じゃん。ワザワザ外で待ち合わせする必要ないのに」
「ち、違いますって…」
すっかり私から逸れた視線が向かった先は、すでに空席となっている松岡さんの席。
「上手いよなぁ、マジで」
大きな独り言を呟きながら勝手に自己完結――まさに一方的で、聞く耳持たずなのだ。