エリートなあなた


一瞬、その言葉に固まってしまった。そしてもう一度、反芻していた自分。



――松岡さんとデート、…デート?はぁああああ!?



「ちっ、ちがいますよ…!」


なおもほくそ笑んでいる大野さんに、両手を左右に大きく振って否定する。



ちなみに隣席の松岡さんといえば、小一時間ほど前に作業を終えて退社済み。



そんな私たちには本命がいる、と知らないでの発言と分かっていても対処に困る。



「あ、そっか――もしかして、松岡さんと時間差退勤ってヤツ?

周知の仲なんだし、今日なんて休日じゃん。ワザワザ外で待ち合わせする必要ないのに」


「ち、違いますって…」


すっかり私から逸れた視線が向かった先は、すでに空席となっている松岡さんの席。


「上手いよなぁ、マジで」


大きな独り言を呟きながら勝手に自己完結――まさに一方的で、聞く耳持たずなのだ。



< 268 / 367 >

この作品をシェア

pagetop