エリートなあなた
有能揃いの試作部内中から見事、構造課へ選抜されている大野さん。
そのため頭はキレる、非常に知識も豊富で見た目よりも弁が立つとか。
とても明るい人だし、徹夜続きの時は差し入れをくれる優しい面も持っている人。
だけれど…、ただひとつの問題点――それが空気を読まないことである。
人の話を聞かない節が間々あって、私も時おり困り果ててしまう時があるのだ。
今にしてもまさにそう。こちらの否定を無視して、自分の世界で自己完結させている。
「社内恋愛も、結構大変なんだなぁ」
アハハハッ!と笑いを向けられて、心にツキンと感じた小さな痛み。
――そんな風にあっさり、笑い飛ばせるものなの…?
人の話を一切聞かない大野さん。同時に人の顔色も読まない人でもある。
だけれど今の私にとっては、その方が好都合だった。
“社内恋愛は大変”と笑われた時点で、すっかり顔の表情を失っていたから。