エリートなあなた


押し寄せるそれらに戸惑いながらも、混乱する頭の中を整理して紡ぎ出した。


「あ、あの私…、ずっと課長にお礼が言いたかったんです」

「お礼?」

「はい、…えと」


私の言葉を待っているのか、反応をみせない課長。恥ずかしさが立ち込めていく中、ひと呼吸おいて続けた。



「あの時…半年前にお話しさせて頂いた時。…課長がアドバイスを下さらなければ私は、とんでもない勘違いをしたまま仕事から逃げるところでした。
どれだけ過大評価をして、自己中心的に物事を捉えていたか身に沁みて感じております。

もちろん課長の仰っていた“チャンス”がいつ訪れるか分かりませんが、…でもこの会社へ入社出来て良かったです。
阪本先輩のような目標としたい先輩に、日々鍛えて頂いていますから」


ただ黙って私の話に耳を傾けてくれる課長。だからこそ深くお辞儀をして言葉を締めた。


今はもうあの時のように、溜め息交じりで仕事に向かっていることがなくなった。


そして何かを見つけたいと、励むきっかけを下さった感謝を込めて深く一礼する。


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