エリートなあなた


――これはウワサと一緒の次元なのだと、と必死に自分に言い聞かせても笑えない。



彼氏から向けられる視線と声が厳しくて。キッパリ一線を置かれる辛さが分かる…?



他の女性――矢崎さんと、楽しそうに会話している姿を見たときだってそう。



届いてしまう距離から彼女の目と紅潮した顔を捉えて、弾んだ高い声を聞く度に。



何回、大丈夫だと言い聞かせながらも、心が折れそうになったか分かる…?



――どれもが“疲れる素”とは分かっているのに、…子供染みた考えが止まらない。



松岡さんとは笑い話なのに、修平さんは絶対に他言無用であるこの現実を、あっさり肯定されて悔しかったのだ。



「あれ、どうかした?」


そこでようやく、ずっと黙り込んでいたことに気づいた大野さん。



俯き加減で座っている私の顔を、探るように斜め向かいから覗きこんでくる。



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