エリートなあなた
そのため泣きそうな目を見られそうになり、逃げるためにますます俯くばかり。
本当ならば、笑って返してしまうところだろう――何にもありませんよ?と。
だけれど、これ以上は大野さんに対して、スマートな対応なんて出来そうにない。
こんな時はいつだって、松岡さんがさらさら軽くフォロー下さっていた。
いない時にほど気づく、“味方”の存在が今はひどく孤独感を募らせる。
――いっそこのまま逃げてしまおうか、と頭の片隅で考え始めた時だった。
「…大野くん、14時約束の経過報告メールがまだ届いていないが?」
冷淡ながらもどこか甘い声が辺りに響く。俯いていた顔はそちらへと引きつけられる。
クールさをたたえた表情で大野さんへ視線を送る、課長席滞在中の彼と目が合った。