エリートなあなた
買い物を終えてマンションへ戻った私が作ったのは、彼のリクエストである和食。
今日の朝聞いてみたところ、修平さんの答えがそうだったから。
スーパーで美味しそうな寒ブリを発見し、すぐに照り焼きにすることにした。
かたわらでは副菜とお味噌汁を作ったり、と同時進行で料理にいそしんでいた私。
キッチンでエプロンをつけながらバタバタしていると、インターフォンが鳴った。
腕時計の針がちょうど18時をさした時――休日とはいえ、帰宅には珍しい時刻である。
「――開けて?」と、ただ一言に、ドキッと鼓動が弾んでしまったのは言うまでもない。
今日はさすがに玄関先でスタンバイ。部屋のチャイムが鳴ったと同時に、ドアを開けて彼の帰りを出迎えたのだけれど。
「ただいま」と頬に落とされたキスが、冷たい唇でまた扇情的に感じて。何だか新婚さんと同じだなと笑ってみたり。
すぐに別室へ向かった彼は、精悍なスーツからお得意のスウェット姿にチェンジ。すぐに始めた食事に合わせて日本酒を呑む彼とウーロン茶の私。
「昨日の反省です…、」と羞恥心に覆われながら白状すると、また笑われてしまったけれど…。
そしてお味噌汁を飲んだ彼が「あれ、」と口にして、碗を手にしたまま止まってしまう。
「もしかして、嫌いだった…?」
私の声があまりに沈んでいたのだろう。「違うよ、すごく美味しい」と微笑んで、またそれを食べ始めた。