エリートなあなた


テレビも音楽も何もつけていない、ただ2人だけの静かな空間がひどく心地良くて。



修平さんの息遣いもフレグランスの香りも、全てが伝わってくる膝枕は言うことナシ。



猫が飼い主の膝の上にいたがる理由も、今なら何となく分かる気がする。



すると大きな手が私の頬をそっと撫でた。骨ばっていてとても優しい、大好きな手に安心感が立ち込める。



ずっとこうしていたい…、その気持ちが膨らんでいくばかりで困るくらいに――



「ほら真帆ー、そろそろ風呂に入ろうか?

こんなとこで眠ると今日こそ風邪引くぞ」


「…うん、」


重い瞼が何度も往復していくのが分かるけれど、…安定している膝枕によって誘われる睡眠欲は絶大。



「こら、」と言葉と裏腹の穏やかな声とともに、私の髪を撫でる感触。その時に鼻腔を掠めていく香りにも惑わされそうだ。



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